東洋医学的な治療とは、虚している正気を補い、病気をもたらしている邪を取り去る(扶正去邪)ことによって心身のバランスを回復すること(陰陽調和)です。 東洋医学的な治療法として、湯液(漢方薬)と鍼灸などを用いることが多いです。
体全体を相互関連の中で有機的に把握し、対処するという東洋医学的な発想方法は、医療においては洋の東西を問わず、指導理念としては同じです。
東洋医学の治療基本は「汗・下・吐・和・清・温・消・補」です。東洋医学の治療各論としては、病邪(病気をひきおこす条件)の相違による、「傷寒六経弁証」(寒邪)「衛気営血弁証」「三焦弁証」(温邪)などの弁証(診断と治療の方針を決定すること)体系や、婦人科の「経(月経)・帯(帯下)・胎(妊娠)・産(分娩)」、小児科の「麻・痘・驚(痙攣)・疳(栄養失調)」など、各分野における診断治療各論体系が存在しています。
東洋医学は全体的な指導理念としては優れていますが、局所的・質的診断においては西洋医学の方法論が優れている場合が多いです。
古典的な四診のみで病態のすべてを把握することはそもそも不可能です。むしろ、診断において、より精密な技術方法論を有する西洋医学の土俵においてこそ東洋医学の全体観的な病態生理の考え方はその有効性を発揮する可能性があります。治療哲学としての東洋医学は、指導理念としては西洋医学的方法論をも駆使し得るものなのです。
西洋医学の治療に治療薬としての漢方薬を西洋医学の治療持ち込むことも意義のあることです。東洋医学の哲学、生命や疾病に対する考え方を応用することがより重要課題です。
医療社会において東洋医学の果たすべき役割を考えると、漢方薬や鍼灸を手段として用いることのみに拘泥することなく、東洋医学の根底に流れている思想を理解し、個々の立場に応じてその実践活動を展開することが大事です。